こんにちは、ユミシモンです。
竹弓の手入れ(メンテナンス)として、櫨蝋(はぜろう)のワックスを塗る紹介をします。
Bamboo bow maintenance. Apply wax.
動画で話しそびれたことなどを補足する記事になりますので、よろしければ動画の後にでもご一読ください。
竹弓のメンテナンスについて
竹弓は、内と外に使用される竹や側木(そばき)並びに芯に用いられる木材など天然素材で作られています(最近はカーボン入りの竹弓もあります)。
制作途中で熱を加えたりしながら加工をしていますが、工業製品のようにまったく同じモノを作り続けることはできません。ですので、弓を注文して購入する人の中には、同時に二張り(兄弟弓)を注文して、替弓(かえゆみ)としてや、交互に使いその間に弓を休ませるといった利用をする方もいます。
竹弓は、天然素材であるがゆえに気温や湿度、使用状況によっても状態に変化を生じます。
私も初めて竹弓を購入する時には、先輩方にいろいろと話しを聞いたり、ネットで調べたりしました。
怖い話しだと...
弓具店で肩入れしたら、笄(こうがい)を起こしたとか、購入して初めて使用した日に同じく笄を起こしたなんて話しを聞いてしまったので、かなりビビったものです。
新品で購入すれば、6桁を越える値段のものもありますから、慎重になるのもよく分かります。
実際に私も笄は経験していますが、日常的に使用する今となっては、「(笄)になるときはなる」といった気持ちでいます。
※竹弓に対する考え方は、人それぞれだという前置きはしておきます
天然素材に対する考え方は、人それぞれだと思いますが、身の回りに天然素材を使用した製品はありますか。
竹や木材を使用したモノ(笛・テーブル・イスなど)以外だと、革製品(バッグ・シューズ・ベルト・革ジャンなど)が思い浮かぶと思いますが、メンテナンスはしていますか。
革は使用しているうちに、徐々に表面が乾いてきますのでオイルを塗ってあげる必要があります。野球のグローブにオイルを塗ってあげるのも同じ理由ですね。
革製品を購入するときには、店員が手入れの方法を教えてくれたり、同じ店舗内にメンテナンス用のオイルを販売したりしているのを見たことがある人もいるのではないでしょうか。
使用前と後に乾いたタオルで拭く?
「使用前にタオルでこすると摩擦熱が起きて弓を起こしてあげられてよい」
「ニベが溶け出す温度までこすって暖めてからがよい」
うーん、なんとなく(理由を聞いたときに答えとして)聞く言葉なのですが、摩擦熱がしっかり伝わる?ほど拭いている人って、ほとんど見かけないです。
私の周囲では、弓巻きから出したら、ほとんどそのまま弓を張っています。
「使用後にタオルで拭く」のは、手の油分などが付いたりしているのを拭き取るという意味では、道理を得ているように思います。
「竹の表面には十分な油分があるから拭くだけでよい」
それって、永久にですか?
何を言いたいのかというと、「拭くだけ」でいいの?と自分は疑問に思ったということです。
竹弓に適したメンテナンス用品は?
日常的に、木製品や革製品にオイルを塗るなどのメンテナンスを行っていたので、天然素材の竹だって何かした方がよいのではないか。
しかも、弓を引く度に変形するモノであるならば、なおさらだと考えました。
そんな疑問から、「竹」に対するメンテナンス用品はないかと探し始めました。
しかしながら、様々な用品がある木材と異なり、「竹」という素材そのものに対するメンテナンス用品そのものが圧倒的に少ないことも分かりました。
今回使用している櫨蝋のワックス以外に、竹製品の手入れとして候補に上げてみたのは“クルミ油”、“蜜蝋”あたりでしょうか。
クルミ油は、文字通りクルミから抽出したオイルになり、液体で販売されています。 |
蜜蝋は、ミツバチが六角形の巣を作る材料として、腹部にある分泌腺から分泌するロウのことです。 |
どちらの製品も、さらに調べてみましたが、自分の中では今回採用を見送りとしました。
櫨蝋のワックスについて
天然素材であり、櫨の木から抽出される日本独自の蝋になります。
江戸時代からお相撲さんの鬢付け油や歌舞伎役者、舞妓さんの化粧下地にも使われてきた歴史があり、安心して使える日本の蝋として販売されています。
また、使用してから知ったのですが、
名弓:肥後三郎の制作者が「弓に生きる」の本の中で(以下引用)
“昔はロウで仕上げ、クルミ仕上げといって、側木に塗って艶を出しました。
ですから布で拭きこむことによって、だんだんいい艶になるんです。
ところがラッカーですとそれで色はおわってしまいます。
こうした艶や色をだすのも、弓を育てる一つなんですね。”
と触れられていました。
肥後三郎の制作者の付近は、櫨(ハゼ)の木の産地でもあり、竹弓の側木にも用いられているのをご存じの方も多いと思います。
櫨の木
<分類>ウルシ科ウルシ属、落葉小高木
<別名>ハゼ、リュウキュウハゼ、ロウノキ、ハジモミジ など
<英名>Wax tree
英名が、ワックスの木っていうのがいいですね。
そんなこんなで、櫨蝋のワックスを採用しています。
https://www.yokamon.jp/ichiba/c200421/4
作業手順と補足事項
動画から切り出した画像で再確認していきましょう。
もともと柔らかめではありますが、容器から取り出しやすいのは使いやすくてよいことですね。
容器からすくってみたところ。
説明書にも記載してありましたが、別容器に取ってから練り込んで、柔らかくなってから使用します。お皿を手で持って温めながら混ぜるとさらに柔らかくなります。
ティッシュペーパーって便利なのですが、使うのはやめましょう!
メガネのレンズなどに使うと、知らないうちに細かな傷が付くくらいですので、竹という天然素材には使わないようにしましょう。
櫨蝋のワックスは、握り革以外のすべての部分に使用することができます。
とにかく、薄くのばしながら塗っていきましょう。
手に付くと多少油分がつきますので、末弭か本弭のどちらかから塗り進めるといいですよ。
塗ったからすぐに艶が出るという訳ではありません。
オイルは染みこませるモノ、ワックスは表面を保護するモノといった違いがあります。
ひととおり塗り込んだら、最後にワックスが付いていない乾いた部分でしっかりと拭き取るつもりで再度こすりながら拭きましょう。
動画をアップした後に質問があったので、補足事項を追記しておきます。
質問内容は
1.どのくらいのペースでワックスを塗りますか?
2.ワックスをかけたら、すぐ引かずにしばらく寝かせますか?
なっつさん、おはようございます
ペースとしては、裏反りの様子を見て落ち着かせたいときなどを目安にしています
すると、使用頻度とバランス取れます
あとの目安は2ヶ月に1回程度です
塗ったあと4~5日は触りません
使う前に再度乾拭きします
動画に入れそびれました😅
ご参考になれば幸いです☺️— ユミシモン (@yumi_simon) December 26, 2019
以下はお好みだと思いますが
・ワックスを塗った後は、使用しないことと同時に、竹弓は裸のまま空気に触れさせています。
・4~5日程度経った後に、再度乾いた布を使い、仕上げのつもりで拭き上げます。
すると、ベタつきはほとんど解消されます。
その後、弓巻きにて保管といった形で使用をしています。
まとめ
櫨蝋のワックスを使用したからといって...
竹弓の笄を完全に防ぐことはできないと思います。
ただし、タオルで拭くだけを続けて表面が乾燥しすぎることは、笄のリスクが多少なりとも上昇するのではないかと思うのです。
やれることをやって、それでもダメなときにはあきらめもつくので私はやっています。
まぁ、気持ちの問題かな?
ここまでのお話しは、あくまでもユミシモン流です。
保証はありませんので、自己責任でお願いします。
ご自分の竹弓・竹矢にあったメンテナンス方法を研究されるのも、弓道の楽しみの一つかもしれませんよ♪
最後まで読んでいただきありがとうございました。